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いつの間に入れ替わったのか、急に低い声が耳元で響いてドキリとする。
けれどお母さんを気にしてなのかぼそぼそと話す家村さんは心底申し訳なさそうで、大変そうだなとつい苦笑いしてしまった。
『急に来てあん時のことめっちゃ疑うから一言否定して欲しかっただけやねんけど無理やり携帯奪い取られてや……突然悪いな、大丈夫やった?』
「あ、うん、お昼やったし」
むしろ丁度よかったというかなんというか。
この電話があったお陰でさっきまでの沸々とした感情がすっかりと消えている。
あのままでいたらきっと午後からの仕事にも少なからず影響していたに違いない。
そう思うと、あのステキなキャラのお母さまにもある意味感謝だ。
『ならええねんけど。うちの母親あれやからな……あしらうん大変やねん』
『何言うてんの、可愛い息子が道踏み外してへんか見に来てあげたんやん』
『我が子をもっと信用せぇ』
画面の向こうで繰り広げられるやり取りがどこか懐かしくてほっとする。
なんだかんだ言いつつ仲は悪くないんだろうな、なんて勝手な想像に無意識に口許を緩ませていると、そうや、とお母さんが手を叩く音が聞こえた。
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