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改めて二人で仕切り直しとなった夜ご飯の場。
微妙な空気が漂ったのは最初の一瞬だけで、お母さんという共通の話題が出来た私たちは、さっきよりも自然な会話が弾むようになった。
ほんの少しだけ入ったお酒と、テンポのいい会話が程よくテンションをあげてくれる。
再会前までわずかに残っていたさい疑心も母親に会ったことで消えてしまった。
思いのほか身構えずに話せたのは耳に馴染むその方言もあったのかもしれないけれど。
一番は多分、共通した故郷の話だった。
「阪急電車! 私もよく乗ってた! 懐かしー!」
「え、まじで?」
「うん、JRより断然阪急派やったもん」
「せやんな! 俺もめっちゃ阪急派やった!」
そんなことから同じ沿線に住んでいたことが発覚すると、一気に親近感が湧いてしまう。
会話が弾むほどに、ここに来るまで頭を占めていた聡のことが気にならなくなったのは、これまでの私とはまったく関係のないところにあるこの人との関係が、酷く心地いいものに感じたからで。
そんな自分に、私は小さく頭を振った。
……単純すぎるやろ、私。
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