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「ごちそうさまでした」
軽く音を鳴らして後ろ手にお店の引き戸を閉めた家村さんに頭を下げる。
結局、今日のご飯も彼に――というか彼のお母さんに出していただくことになってしまった。
これで金貰ったら俺が怒られるわ、そう言われてしまえばそれ以上出すとも言えず、またまた甘えることになってしまったものの、やっぱりちょっと申し訳なくてそわそわする。
「や、ええねんて。こっちこそわざわざ付き合ってもらってんし」
「や、次こそはなにか奢ります」
次は。きっぱりとそう言えたのは思いの外今日が楽しかったからだ。
とりあえずは友達として。
もっと色々話してみたいと思ったのは、決して淋しいからという理由だけじゃないと思う。
「んーじゃあまだ早いしもう一件行く?」
「え。……や、明日も仕事やしそれはちょっと無理かも……」
しかしながらまだ月曜日。
定時であがったとはいえ流石にあまり夜が遅くなるのもつらい。
思わず明日の仕事を考えてしまった私の頭に、小さな疑問がふわりと湧いた。
……そういやこの人、今日は仕事じゃなかったんかな?
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