シリコダマ

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その日の学校帰り、寄り道をした。近くを流れる川の河川敷で膝を抱えて川に石を投げた。 僕だってほんとはうまくスイスイ泳ぎたい。きっと、帰ればお母さんは水泳の話をする。 「少しは泳げるようになった?」 余計なお世話だ。人事だと思って。泳げない者がさもダメな人間みたいに言われる。 そんなことは言ってないというだろうけど、僕にはおんなじだ。 母さんだって、僕をダメな子なんだって呆れてるに違いない。 「はあ。上手く泳げるようにならないかな。」 僕はつい口に出して、もう一つ石を投げた。 すると、うまいこと水面を切って5段くらい水面を跳ねた。 その石が中洲の到達し、中州の雑草をがさりと揺らした。 すると、川の中州の雑草が風もないのにざわざわと揺れた。 そのざわざわという音がだんだんと近づいてくる。 中州の雑草の中から、緑色のものが出てきた。 その緑色のものは、まるで人のようだった。 頭をさすりながら出てきた。 うっそ!カッパ? 「わぁぁぁぁ!」 僕はあわてて逃げようとした。 「石ぶつけといて、謝りもせんのかい!」 わわっ!口をきいた! 僕はますます怖くなった。人の言葉しゃべった。しかも日本語。 僕はきょろきょろとカメラを探した。 これって、絶対ドッキリだろ? 僕は慌てて周りをキョロキョロした。 「これってドッキリなんだろ?僕にはわかってるんだ!」 僕は大声で叫んだ。 「何を言うとるんじゃ、お前は。」 カッパがまた口をきいた。 どこからもカメラを抱えた人間は出てこないし、カッパと思われるものは妙にリアルだ。 目は釣りあがり、蛙みたいな緑色のテカテカした肌。 大きな特徴としては、頭にお皿がある。というより、落ち武者みたいだ。 「ご、ごめんなさい。」 僕は怖くて、震える声で謝った。 素直に謝るとカッパはチッと舌打ちをし 「まあ、少し頭に当たったくらいでたいしたことないから、許したるわ。 それより、お前、泳ぎがうまくなりたいんか?」 と僕に言って来た。 聞かれてた。僕はとたんに恥ずかしくなった。 僕は首だけを曲げて、こくりと返事をした。 「お前を泳げんようにしてるのは、水への恐怖や。 俺が、水への恐怖をなくしたるわ。」 そう言うとカッパは僕の手に触れてきた。 「うわっ。」 ぬるりとした感触に思わず僕は手を引っ込めた。
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