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「そろそろな、いただくもの、いただかんことにはな。」
僕はカッパのその言葉が理解できなかった。
「お前、シリコダマって知ってるか?」
僕はおじいちゃんの話を思い出した。
「まさか、ぼくのシリコダマ、とらないよね?」
僕はカッパが冗談を言っているのだと思った。
「お前、シリコダマって何か知ってるん?」
カッパが僕にそう言った。
「知らない。でも、体の大事なところなんでしょ?」
僕がそう言うと、カッパは腕組みをし、
「まあ、大事っちゃ大事やな?体とは限らんが。」
体じゃない?
「シリコダマってな、知ると言う字に子供の子、タマは魂のことや。」
僕の頭の中で変換される。
知り子魂。
「俺はお前と、知り合いになる必要があった。もうそれは条件としては十分や。」
そい言うといきなりカッパは、僕の手を強く掴んだ。
そして、僕を川に引き込む。
「や、やめて!た、助けて!」
僕が抵抗しても、まるで大人のような力で川に引き込まれた。
お、溺れる!
そう思ったが、僕は水の中でもちっとも苦しくなかった。
「あれ?苦しくない。なんで?」
僕がそう言うと、カッパが水の中でニヤリと笑った。
「それはな、お前もカッパだからや。」
うそっ!
僕は自分の手を見た。
手は見事な緑色の肌に変化し、指の間には水かきがついていた。
慌てて頭を触ると、頭頂部には髪の毛がなかった。
顔にも触れてみる。鼻がない。
鼻には穴しかなくて、その下はくちばしのように広い。
「うそ!嘘だ!」
僕は水に引き込まれながら泣き叫んだ。
「お前、往生際悪いな。もうあかんねん。見てみ?」
深い川の底から、僕の体がぷかぷか漂っているのが見える。
「俺ら、知り子魂集めて仲間増やすしか、繁殖でけへんねん。
お前、俺と離れたくなかったんやろ?よかったな。ずっと一緒やで。」
カッパが笑った。その顔は禍々しかった。
お父さん、お母さん、助けて。
僕はここで生きてる。
おじいちゃんの言うことは正しかった。
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