第1章

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ホテルに戻り、 「もっと具体的に話さないと納得しないか……」 刑事への信用を得る為、正確にあの時の事を思い返し始める。 格安のアパート、水が出なくなった時の苛立ち、扉が開かなくなり窓が無くなっ時の動揺、異臭の中の空腹感、水が無い恐怖…… そして、恐怖がもたらした壁の中のミイラを思い浮かべていた時、電話が鳴った。 「はい」 ミイラの映像が浮かんだまま電話に出る。 相手は刑事だった。 「実はミイラについて色々解った事があるのですが……」 刑事は少し言い淀んでいる感じだった。 清田の頭の中には、あの時のミイラが鮮明に蘇っている。 抜け落ちた髪、痩せこけた顔は必死の形相で口を開けていた。 「何を求めていたんだろう……」と考えながら、浮かべた映像を下へと移していく。 筋の張った首、肋の浮き出た体、骨の形に伸びる腕…… 「あっ……」 一つの違和感が声を出させた。 「どうかされましたか?」 刑事の問いに、 「い、いえ別に。 それでミイラの何が解ったのですか?」 違和感を消し去ろうと質問を返した。
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