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ホテルに戻り、
「もっと具体的に話さないと納得しないか……」
刑事への信用を得る為、正確にあの時の事を思い返し始める。
格安のアパート、水が出なくなった時の苛立ち、扉が開かなくなり窓が無くなっ時の動揺、異臭の中の空腹感、水が無い恐怖……
そして、恐怖がもたらした壁の中のミイラを思い浮かべていた時、電話が鳴った。
「はい」
ミイラの映像が浮かんだまま電話に出る。
相手は刑事だった。
「実はミイラについて色々解った事があるのですが……」
刑事は少し言い淀んでいる感じだった。
清田の頭の中には、あの時のミイラが鮮明に蘇っている。
抜け落ちた髪、痩せこけた顔は必死の形相で口を開けていた。
「何を求めていたんだろう……」と考えながら、浮かべた映像を下へと移していく。
筋の張った首、肋の浮き出た体、骨の形に伸びる腕……
「あっ……」
一つの違和感が声を出させた。
「どうかされましたか?」
刑事の問いに、
「い、いえ別に。
それでミイラの何が解ったのですか?」
違和感を消し去ろうと質問を返した。
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