第1章

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清田はその日、少し酔っていた。 「あっ、こっちじゃねぇや」 昨日までの家に帰りそうになる。 新しい家の鍵をポケットから取り出しながら、階段を昇る。 フラフラになりながらも、錆びた手すりは握らない。 アパートと呼ぶのも憚るほどの古い建物。 その二階の一室が、清田の新しい住処になった。 ボヤけた目を擦りながら、揺れた右手で鍵穴に必死に差し込む。 ノブを回して扉を開くと、 ギィーッ 蝶番の鈍い音が、静まったアパートに響き渡る。 「いくら安いからって」 引っ越す決め手になったのは破格の安さ。 「ボロボロすぎるよな」 苦笑いしながら部屋の中へ。
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