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「姫良、昔の記憶を怖がることはない」
姫良の戸惑った眼差しが紘斗をまっすぐに見上げてくる。
「紘斗?」
「それとも、おれは役に立っていないか」
「……役に立つとか、紘斗のことをそんなふうに考えたことないけど」
姫良はどう応じるべきか迷うようにしていたが、やがて、からかいを含んだくるくるとした眼差しでそう答えた。
「それはそれで光栄なんだろうな」
紘斗は口を歪めた。
姫良のくちびるにも笑みが広がる。
紘斗が云ったことは果たして姫良に通じているのか。
通じていなくてもいま笑みがこぼれるということは、たとえ糸一本でもふたりは確かに繋がっているのだろう。
そこへふいに人影を感じた。
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