第1章

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挫折というものは誰もが経験する。当たり前の出来事がそこにある。才能があるとか、才能がないとか、あの人には勝てないとか、自分はダメだとか。大人になっていくにつれて、忘れて、考えなくなることが多くなる。もしくは目をそらす。それを挫折というものだ。 子供のうちはいろんなことができる気分になって、漫画やアニメの主人公に憧れて、サンタクロースがプレゼントを持ってきてくれるとか、夜中になると、意味もなく暗闇が怖かったりする。意味のない不安、漠然とした恐怖も、成長するにつれて無くなっていく。それが大人になることかもしれない。理不尽を知り、不条理を感じ、身の丈に合った生き方を覚える。 できないことを知り、サンタクロースは偽物だとわかり、漫画やアニメの主人公は所詮は、空想の中の出来事だと思う。他人と競い、諦め、挫折し、目の前に立ちはだかる、壁からくるりときびすを返して別の道を探して、そうやって諦めながら生きていく。 無駄なことを削ぎ落とし、効率のいい方法を探す。それが大人になることなのだ。何でもできるなんて幻想でしかないことを学ぶ。 でも、もしも、そういう気持ちを失わなかったらどうなるのだろう? 自分はできると信じ続けて、大きな壁も強引に押しのけて行けると信じていたらどうなるだろう? 挫折というものを、挫折を知らない少年が挫折を知ったらどうなるだろう? これはそういう物語だ。 「真朱? 陰火、日傘、帽子、鏡子、田奈、裕樹」 名前を呼ぶ、守りたかった者達、自分が救ってきた者達の無惨な死体を見つめ、彼、山都大聖は震える声で彼女達の名を呼ぶ。 「おい、冗談だろ」 だって、お前達は、こんなことじゃ死なない。生きてるだろ? しかし、彼女達はピクリとも動かない。 「俺が、俺が助けるって、だから、ほら、大丈夫だ。なぁ?」 ヌルリとした血に足を取られ、山都は真朱の首を抱え上げた。綺麗なポニーテールは乱れ、ズシリと重たい。 「あ、うっ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 山都の意識は、そこでブツリととぎれた。陰火や鏡子、帽子ならもともと幽霊のような存在だから生き返るかもしれない。でも、真朱や裕樹、田奈、日傘はそうはいかない。彼女達は生きてる人間なのだ。不可思議な力を発現させていても死ぬのだ。なにより、裕樹は下半身を失い、
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