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でも、私は狼歩さんに気兼ねをして、狼歩さんが喜びそうなことを口にした。
「そうね。そうできたら楽しいわね」
「じゃあね」
狼歩さんは私の腕を取ると、男の人にしては長い睫毛で縁取られた目を閉じた。私もつられて目を閉じた。
瞼の裏側にキラキラと星が瞬いている。
瞼が重かった。またどこかへ行くの?
なんだか、このデートの終わりが近づいているのを私は感じていた。
「さあ、目を開けて」
狼歩さんの声で、私は眼を開いた。
私の目の前には大きな大きな海が広がっている。私も海の底にいて、たくさんの魚たちが泳いでいるよう。
「あっ、ここは沖縄の水族館ね?」
「そうです。僕の一番好きな水族館です」
そうそう。ここはまだ娘が受験するとか言い出す前に、パパと私、娘の三人で来た場所だわ。サメの顎の模型の前で三人、写真を撮ったわ。
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