沖縄県 本部町 水族館

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大きな水槽の前で、私は時間の経つのも忘れて魚たちを見ていたの。 パパは何も言わずに、だまって後ろの手摺にもたれ、私が飽きるまで待っていてくれたのよね。 あの時間は幸せだった。 私はこの大きな水槽の前で魚になりたいと思ったんだったわ。 そう。私はずっとパパと恋をしたいと思っていたのよ。 私とパパとは、手を繋いだりはしゃいだりするような恋人同士じゃなかった。 私はそこが不満だったけれど、パパは不器用な人なのよね。 私はそんなことを思い出していた。 はっとして私は自分の服を確認した。 だって、あの原宿のトレーナーにセミタイトのスカートなんていう、あか抜けない服のままだったらいやだもの。 良かった。私はチェックのワンピースを着ていた。ブルー系のちょっとラルフ・ローレンぽいもの。この服を着て前もここに来たんだった。 「狼歩さん?」
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