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「見て。この尾びれ、車のタイヤのゴムでできているんですって」
はしゃぎながら報告する私に、狼歩さんは知っていても「知ってる」とは言わない。ただ黙って笑っていてくれた。
それは当たり前のことだけれど、「知ってる」と言われたら拒絶されたような気分になるもの。
狼歩さんのそういう受け答えって、相手に対する優しさなのかな。
「ねえ、あれはフジの子ども?」
「どうかな、違うんじゃないですかね?」
狼歩さんは円形の窓を覗きながら答えた。
パパの「知らん」とは大違い。
パパと狼歩さんはどうして違うのかな?親の問題なのかな。それとも相性?
「ふうかさん、ちょっと見せたいものがあります」
ひとしきり展示物を見たら、狼歩さんは私の手を取って外に出た。
海風が気持ちいい。風は、私のワンピースの袖を通り抜けた。
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