86人が本棚に入れています
本棚に追加
「それはね。逃げることです」
「えっ?」
思わず声を上げてしまった。それはどういうこと?
いいえ、私にはわかっていた。
「相手を変えるか、自分を殺すか、そこから逃げるか。どれが現実的ですか?」
「でもでも」
狼歩さんは、くるっと私の肩を回して正面を向けた。
見ないで。私の顔は涙でびしょびしょだし、化粧は落ちているし、それにおばさんだし。
でも狼歩さんは眼を逸らさなかった。正面から私の顔を見つめた。
ちょっと怒っているような顔だった。
「ふうかさん、どうして僕がやって来たか、わかりますか?」
「えっ? どうして? どうしてって、これは夢なんでしょ?」
「僕はあなたを助けに来たんですよ!」
狼歩さんは私を強く揺すぶった。
最初のコメントを投稿しよう!