ふうかの家

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私はこめかみを揉んだ。私は昔から、理解できないことに直面すると、こうする癖がある。 「あなたは、狼歩さんよね?」 「はい」 「世界中の色んな所へ連れて行ってくれた狼歩さん?」 「そうですよ」 「あれは夢じゃなかったの?」 「ええ。でも、何と言ったらいいのかな。すべてあれは、ふうかさんの望んだこと。あなたの頭の中にあったことを体験したということなんですよ」 理解できない。どうしよう。私は、さっきとは別の意味で泣きたくなった。 「じゃあね。僕の正体を明かしましょう」 正体ですって?じゃあね、というのも良くわからない。私は急に怖くなった。 だって、優しそうに微笑んでいるこの人のことを、私は何も知らないことに気付いたんですもの。
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