ふうかの家

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狼歩さんは私の反撃を予想していなかったらしく、一瞬言葉に詰まった。でも立ち直った。 「僕にはふうかさんの気持ちがわかりますよ」 ああ。どうしよう。この言葉をこの人以外の人から聞きたかったのに。正体の分からないこの人に優しくされたら、私は魔法にかけられてしまう。 「僕と世界中を回って、楽しかったでしょう?」 狼歩さんはこれ以上ないような魅力的な笑顔を見せた。 「え、ええ」 「ふうかさん」 「はい」 狼歩さんはダイニングテーブルからソファに近づき、私の隣に腰を下ろした。 「僕の名前は鷹視狼歩。苦しんでいる人を幸せにするために現れます」 それって? 「あなたは天使なの?」 「ええと。そのように言う人もいます」 なんなの? 混乱してきた。私には現実の人じゃないものが見えているってこと? 私、頭がどうかしちゃったのかな。
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