ふうかの家

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そうよ。夢のデートといって、香港に行ったりフランスに行ったりイタリアに行ったけれど……。あれは全部私の妄想だったの? 私は大声を上げて泣きたくなった。 現実から逃避しようと思って、ついに私はどうかなっちゃったんだ。 いいわ。この際子どものように泣いてやろう。いっぱい泣くのよ。 「しょうがないなあ」と言いながら、狼歩さんは手放しで泣く私の肩を抱いて、赤ちゃんをあやすようにゆっくりと揺すった。 「泣かないで。世の中にはふうかさんの知らないことがたくさんあるんですよ」 私はこの何日か、泣き虫さんになった。 涙は枯れることはない。でも、私の心は泣かないと壊れてしまうかもしれない。 「いいですか。本題に入りましょう。あ、これはさっき言いましたっけね」 狼歩さんはくすっと笑った。
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