ふうかの家

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「ふうかさんは限界でした。あの時僕が現れなかったら、ふうかさんはふうかさんでいられなかった。それで、僕が現れたんですよ」 そうだったわ。私はあの晩、パパに冷たくされてとっても悲しい気分になったんだった。消えてしまいたいと思ったんだっけ。 狼歩さんの腕の中で、私は次第に落ち着いてきた。不思議。大きな腕の中ってなんで落ち着くのかしら。 「いいですか?」 狼歩さんは私の眼を覗きこんだ。あ、近い。近すぎるってば。 でも、そのまま狼歩さんは顔を遠ざけた。涙でぐちゃぐちゃな顔にあきれたのかしら。恥かしい。 「は、はい」 ちょっと答えに涙が残っていたけれど、私は深呼吸をしてタオルハンカチを顔に押し当てた。 「では、説明しましょう。ふうかさんが僕の手を取った時、契約は成されたんですよ」 「契約?」
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