ふうかの家

18/21
前へ
/205ページ
次へ
狼歩さんは私のために助手席のドアを開けてくれた。 どうしましょう。私、人にドアを開けてもらって車に乗ったことなんてない。 ドアを閉めようとしている狼歩さんの前で、上手に座ることができるかしら。 大丈夫だわ。ちょっとスカートのすそが引っ掛かったような気がしたけれど、ちゃんと座ることができたみたい。 私は助手席から自分の家を見た。 玄関ポーチは淡い光が灯っている。 あの家は一見温かそうな家族が住んでいるように見えるけれど、私が寂しい思いをしてきた場所なんだわ。 玄関灯がぼやけて見えるのは何故かしら。 「ふうかさん」 「はい」 「どこか行きたいところはありますか?」 狼歩さんは自らの安全ベルトを装着しながら、私に尋ねてくれた。 パパは私に、こんな風に聞いてくれたことはあったかしら。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加