ふうかの家

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いつだって出かける時は自分で決めてしまうもの。 娘は「パパのミステリーツアー」なんて呼んでいるけれど、たまには相談してほしいものだわ。 でも。こうして聞かれても私は行きたい場所が思いつかない。ちょっと悲しい気分になった。 「思いつかないわ」 「では僕に任せていただけますか?」 「はい。お任せします」 「承知いたしました」 狼歩さんは敬礼のような仕草をした。 いっくら私が二十歳の女の子の外見でも、心はおばさんなんですもの。狼歩さんのそんな仕草をかわいい、と思ったわ。もう完全に年上感覚だわ。 「シートベルトをしてくださいね」 パパだったら「おい、シートベルト」と言うわ。 狼歩さんの優しい言葉に、私はちょっと鼻の奥がつんとした。
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