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「これね。最初にベルトがギュッとなっていつも、おおっ!って思うんですよね。心配しないでくださいね」
私は別のことを考えていたのに、狼歩さんはおどけるように言った。
え?なに?シートベルトの話なの?
確かに。そういう機能があるのね。
私は狼歩さんのさりげない優しさに、ほっと息を吐いた。
「ではふうかさん。行きますよ。眼を閉じてください」
「えっ。眼を?」
「はい。そうですね。ゆっくり十数えるくらい」
私は言われるままに目を閉じた。もう何の疑いも迷いもなかった。
一、二、三……。心の中でゆっくり数える。十数えたくらいで、狼歩さんが声をかけた。
「いいですよ」
私は静かに目を開けた。
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