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私は思わず膝の上のバッグの持ち手を握り締めてしまった。
それでも車は危なげなくスムーズな走りを見せていたので、ちょっと私は安心した。
山道はそれほど混んではいないみたい。たまにロングリムジンが走っているけれど、この辺にはお金持ちがたくさん住んでいるのかしら。
とにかく、狼歩さんはその顏からは想像できないくらい荒っぽい運転をした。
山道だから左右に振られ、私は気持ち悪くなったらどうしよう、とちょっと心配になったわ。だってお夕飯にハンバーグを食べすぎたんですもの。
と思ったら、狼歩さんはスピードを緩めた。
前にバスがいるみたい。でもね。容赦なくクラクションを鳴らす。ちょっと、お行儀悪くない?
すると前を走っていたバスがするすると減速して左側の路肩に止まり、ハザードランプを点けた。
狼歩さんはバスを追い抜くと、サンキュー、というように小さくクラクションを鳴らした。
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