香港 ヴィクトリア・ピーク

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何なの?道が開け、目の前に遮るものがなくなって、私の眼に光の渦が飛び込んできたの。すごい! 道は急坂。そこを、それこそ『親の仇のように』車は駆け下りていく。 まるで光の中へジェットコースターで突っ込んで行くみたい。 「きゃっ、すごい」 私は胸の前で両手を握りしめた。 だってキラキラキラキラ、光に向かって落ちて行くのよ。 「ね?さっきのバスが前にいたんじゃ、この風景は見られなかったでしょ」 狼歩さんは言い訳がましく言った。私が嫌だなって思っていたのに気づいてくれていたんだわ。 「バスには悪いことしちゃったけど」 「ありがとう」 「気に入った?」 「もちろん」 「よかった」 本当に良かった。狼歩さんが私のためにしてくれたことだったのね。自分勝手でしたことじゃなかったのね。
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