ふうか、夢のデート

香港 ヴィクトリア・ピーク

「そうなんですよ。赤はこちらでは紅色(べにいろ)。他は黄色、緑、青の四色なんですよ」

本当に？ 私はじっと色とりどりの看板を見たけれど、確かにそうだわ。紫やピンクという色はないわ。

「色にはそれぞれ意味があるんですよ。この四色はほとんど商売繁盛という意味なんですけどね」

「ふうん。そうなの」

でももしかしたら、その四色以外の色があるかもしれない、と私はじっと窓の外を見た。

「ふうかさん、お腹がすきませんか？」

一生懸命看板を見ていたら、突然狼歩さんが私に話しかけたわ。

ええと。「お夕飯をお腹いっぱい食べたんですもの。お腹はすいてないわ」と言おうと思ったら、私のお腹め、ぐう、と鳴ったの。いやん、恥ずかしいわ。

狼歩さんはくすっと笑って、でも何も言わなかった。