フランス パリ エッフェル塔

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パパ、私は我慢するばかりだったわね。私は思い出して悲しい思いになった。 「ふうかさんの初恋はいつでした?」 パパのことを考えていたら、狼歩さんが聞いてきた。 「初恋?」 「そう、初恋です」 人はよく、中学生の時に好きになった人や、高校生で初めてお付き合いした人のことを初恋の人と言うけれど、私にはそういう思い出がなかったわ。 私は、人を好きになるということを知らないでパパと結婚したの。 ドキドキすることもときめくことも知らずに、この人とだったら穏やかな家庭を持てるだろうなと思ったんだわ。 辺りは少しずつ夕闇が迫ってきたみたい。この黄昏の中なら言えるかな。 「私ね。今好きな人がいるの。もしかしたらこれが初恋なのかも」 言ってみたい気がした。今まで誰にも言ったことのない、秘めたる私の想いを。
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