イタリア ローマ スペイン広場

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私たちはキスもなしに、行ってらっしゃいとお帰りなさいをして、そんなことが長く続いていたから、それが当然のことだと思ってしまっている。 パパは私にときめかないのかしら。女としてドキドキすることがないのかな? ああ私、さっき狼歩さんに約束したのに、またパパのことを考えている。 「あ」 埃が入った?私は眼を閉じた。 狼歩さんにしがみついていなければならないから、眼を擦れない。どうしよう。チクチクする。 「狼歩さん、ちょっと停めて」 「どうしました?」 スクーターを停めて狼歩さんは振り向いた。私は眼を擦り、眼の中に入ったものを取ろうとした。 「何か入った?」 「ええ」 「ちょっと待って。無理に擦らないで」 狼歩さんはハンカチかしら、布で私の眼を拭ってくれた。 「ありがとう。大丈夫みたい」 「良かった」
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