ふうか、夢のデート

ベトナム ホイアン

「Cac ban vui long hai ca phe.」

まさかまさか。またしても狼歩さんは知らない言葉で注文をしているわ。この人、何か国語を話せるの？

「さあ座って」

狼歩さんは小さな、それこそ百円均一の店で売っているようなブルーのプラスチック椅子を指さした。

えっ？これ、子供用のお風呂椅子じゃないの？

「ここに座るの？」

「そうですよ」

ほら、と言われて店内を見回すと、恰幅のいいおじさんも、そのかわいらしい椅子にちょこんと腰かけてコーヒーを飲んでいた。

ちょっとおかしい。私は愉快な気分でその椅子に腰を下ろした。

丈の長いブラウスが地面に届いたけれど、仕方ないわね。ここは屋台みたいなものですもの。だれも気取ってないわ。