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やがて低いテーブルに、ステンレスの、ドリッパーなのかな。容器を乗せた透明のグラスが二つ運ばれてきた。
グラスが透明だから、底にミルクが沈んでいるのが見えた。ちょっとねっとりとしているから、コンデンスミルクかもしれない。
不思議。日本では、ミルクは最後に入れて飲むものなのに。
「ふうかさん、暑くないですか?」
狼歩さんは私のかぶっていた編み笠を隣の椅子の上に乗せた。
「ええ」
「まだ朝ですからね。これから暑くなりそうですよ」
狼歩さんの言葉に私は長年愛用している腕時計を見ようと、左手を見た。でも忘れてきちゃったみたい。
あれは父が、私が短大に合格した時にお祝いに買ってくれた、唯一のブランド品。
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