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「これはかっぱの疑いがありますね」
「えっ」
円形脱毛症の診察に訪ねた皮膚科の先生が検査の結果をオレに告げたのだが。
「かっぱ、いったいどういった病気の事ですか」
オレの知らない病名、または病状を言っているのかと思って聞いてみたのだが。
「申し訳ない、詳しいことは私も知らないのですよ、聞いた事位しかなくて、ただ大昔からあって近年の研究で遺伝子の関係する病気と言うのが分かってきた、位で」
変わった病気も在るものだ、それにしてもかっぱとはジョークが過ぎる、子供の頃のあだ名と一緒だと。
オレは幼少の頃から泳ぎが得意で海や川で遊ぶのが大好きで夏になる前から冷たい水に浸かっていたっけ、競えば友達はおろか中学の終わりには体育の先生にさえ負けない程競泳も上達していた。
当たり前の様に水泳で進学して学生の日本記録まで持った、今ではもう少しで日本代表に手が届く程の実力だ。
そんなオレがかっぱだと、有る意味オレに相応しい病気だと思ってオレは少し微笑んだ。
「紹介状を書きますね」
この皮膚科の病院ではこれ以上の事は分からない上に検査も出来ないので、詳しく知りたいなら別の所に行かなくてはならないそうだ。
「かっぱねえ」
この頭頂部の円形脱毛症と一緒に少し気にしてオレは皮膚科を後にした。
8月、水の心地好さが格別の季節。
オレは奥多摩に来ていた。
9月になれば実業団の水泳部の合宿が始まるのでその前にオレはこの
『国立遺伝子病研究センター』を訪ねたのだ、つまりはこの前の皮膚科に紹介されたかっぱ病を調べてくれる病院らしいのだが、その施設は想像以上に立派だった、まず奥多摩の駅からバスで学園都市に行き付属の国立大学に連なる国営の研究センターで受付をしてアポイントを取る。
疎らな人けの割には無駄に大きな建物群が連なる、そのどれもが近代的でエコシャフトにダブルスキン、研究費より維持費のが大変そうな気がする。
アポイント取ると施設の人が迎えに来てくれるとのことでオレは待合室で待つことにした、無料のサーバーまで有る、でも人は居ない。
暫くして白衣を着た眼鏡の中年男性が来た、いかにも研究所スタッフ風、
その男は仲村と名乗った。
「西城さん、こんな所まで良く来ましたね、なにか深刻な悩みでも」
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