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所懐
炎天下、人でごった返すビーチ、漸く空いているスペースを見つけパラソルを立て、レジャーシートを広げて腰を下ろした。
早速飲み物を買いに行くという清人と奈緒に、ウチらの分も宜しくと手を振り、泳ごうという一樹の誘いも断ってアタシはひとり荷物番を買って出た、暑いのは心底苦手だ。
それにしても、ただ座っているだけだというのにサウナにでも入っているかのように息苦しい。
耐え兼ねてTシャツを脱ぎ、キャミソール姿で一樹を眺めた、リハビリの一環で泳いでいるというだけあって水を得た魚のようだ。
初日の観光がイマイチだっただけに、真っ当な旅の思い出が出来て良かったと思う。
「あー、やっぱりそうだ。どっかで見た事あるなぁって思ったんだよな、キヨトの所に遊びに来てるコだよね?」
ナンパかと思ったら清人の名前が出てきて些か驚いた。
「オレらキヨトの同僚で、寮で会った事あるんだけど…覚えてないか。今日はキヨトと来てんの?」
愛想笑いしつつ清人は飲み物を買いに出ていると伝えると、待つつもりなのか同僚ら二人はその場に腰を下ろした。
「何人で来てんの?オレらバーベキューやるんだけど一緒にどう?」
対応に困っていたらばそこへ一樹が戻って来た、でも何だか不機嫌そうだ。
経緯を説明すると、清人に電話してみれば?と同僚らにぶっきら棒に言い捨て、アタシの膝を枕に寝転がった、どうやら妬いてくれているようだ。
「栞その格好…」
「ん、暑いから脱いだよ」
すると唐突に服の上から胸を鷲掴んできた、いやいやいや。
「イキナリなに?」
「心配だから服着て」
見渡せば水着姿のネェチャンがゴロゴロいるビーチだぞ?
「誰もアタシの事なんか見てないよ」
「栞は自分のこと解ってない」
そう真顔で返し、持っていたタオルをアタシの肩に広げて掛けると、一樹はおでこにチュッとキスを落としてまた泳ぎに行ってしまった。
気が付けば同僚らもいつの間にか居なくなっているし…何だかな?まぁでもTシャツ一枚で安心してくれるのなら容易い事だ。
それから程なくして清人達が戻ってきた。
件の同僚からは電話があったらしく、バーベキューには顔を出す事になった。
「なんか邪魔して悪かったって言ってたけど、何かあった?」
なるほど、合点がいった。
イチャ付いてたからかなと答えると、清人は何か含んでいるかのようなふーんという表情を見せた。
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