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バーベキューには二十歳だと偽って参加した。
未成年での喫煙や飲酒が問題なのは当然の事ながら、十六歳の女子高生というのが公言憚るからだ、解っちゃいるが複雑な心境だ。
でもそれよりも、より複雑な心境にさせたのは、そう紹介された訳でもないのに一樹の恋人として扱われたことだ。
奈緒を含め同僚らは一樹に恋人がいる事を知らないから仕方無いにしても、清人も一樹でさえも否定も肯定もしなかった。
だから食事もアルコールも殆ど喉を通らず、どんな話をしたか自分がどう振る舞ったかも覚えていない、上手く立ち回れていたならいいが。
帰りは、同じ場所に帰るのだからと同僚を一人助手席に乗せた。
運転は清人、後部座席の真ん中にアタシ、アタシを挟んで一樹と奈緒が座った。
皆なアルコールが入っているのもあり、泳ぎ疲れたのもあり、車内はシーンと寝静まり返っていた。
だからアタシも寝た振りをしていたのだが、そんな中ひとり黙々と運転している清人が少し気の毒に思えてきた。
「清人、テレビか音楽かけてくれる?」
「シオリ起きてたんだ?」
「ん、アタシほとんど飲んでないし、泳いでもいないから。清人は平気?」
「おぅ、オレ一口も飲んでないし」
その返しにふと一樹の事故の話を思い出した、やはり清人も気にかけているのだろう。
「そうなんだ、偉いじゃん」
「まぁオマエらも乗せてるしな。シオリもムリしないで眠かったら寝ていいぜ」
「ありがと、でも今は平気」
掛けてくれた音楽は名前すら知らない歌手の曲だったけれど、清人が鼻歌交じりに気分良く運転しているようだから何も言わずにおいた。
その合間にたわいも無い会話をポツリポツリ。
だが唐突に、清人が緊張を走らせた。
「シオリ、この前は悪かったな」
この状況でその話する?こちらに凭れ掛かっている奈緒を横目でそろりと確かめ、静かな口調ながらも今は蒸し返してくれるなという意味を込めて溜め息を吐き語尾を強めた。
「清人、それはもういいから!」
「いや、でもあの後さ…」
続けるのかよ、案外良い奴じゃないかと見直したところだったのに前言撤回だ、どうにかして話を逸らさなくては。
「清人、さっきからずっとタバコ吸いたいと思ってたんだけどさ、2人が寄り掛かってて動けないから、清人のやつでいいから火着けてくんない?」
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