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刻々
清人が日勤なのを良い事に朝から愛し合った。
今日の一樹はいつも以上に優しく、アタシの名前を何度も口にする、明日帰るからだろう。
「栞…俺にできる事があるなら何でもする…何かない?」
シーツに包まり、背後から襟足に唇を這わせながら一樹が囁いた。
その言葉の真意は解らない、けれど考える振りをしながら思っていたのは、帰らないで傍に居てほしいという事だった。
でもそんなこと言えやしない。
彼女の事だけじゃなく仕事やその他諸々、越えられない柵が沢山あるからだ。
それにそもそも、それ等をかなぐり捨てるだけの価値がアタシにあるとは思えない、勘違いも甚だしい高望みだ。
アタシは一樹に向き直り、胸に顔を埋めた。
「ギュッてして…」
一樹はそれ以上は何も言わず、ただ強く抱き締めてくれた。
それからまた体力と時間が許す限り何度も愛し合った。
アタシの中は一樹で一杯になった。
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