目眩

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部屋への帰り道は行きとは正反対に隣を並んで歩いた。 けれど行きと然ほど変わりなくアタシは口数が少ない、それは勿論照れ臭さもあってだが、トラウマから震えている事を悟られたくないからだ。 SEXの後はいつもこうだ、血の気が引いて寒くて奥歯がガチガチと鳴るほどに震える。 だから歯を食いしばるが故に口数が減り、身体に触れられるとバレてしまうから距離を取った。 そのよそよそしさが相手に不信感を抱かせてしまうのは解ってはいるのだが、トラウマを告白できないからどうしようもない。 なけなしの小銭でジュースを買い二人で分け合いながら、シャワーを浴びたい、煙草を吸いたいなどと他愛もない会話をポツリポツリと交わした。 その声は部屋に近付くにつれ自然とひそひそ声になった。 「栞ちゃん、車での事なんだけど…今はまだ内緒にしててくれる?」 無論だ、話す気など毛頭無い、適当に話は合わせるからと微笑むと、一樹はごめんねと抱き寄せキスをした。 そして部屋の前、チャイムを押した直後だ、一樹が不意に耳元で囁いた。 「栞ちゃんはまだイッてないよね?次は絶対にイかすから」 え?訊き返す間もなく扉が開き清人が飛び出して来た。 「おっせーよ、オマエらどこ行ってたんだよ?」 「その辺ぶらぶら。栞ちゃん疲れたろ?先に上がっていいよ」 立ちはだかり通せん坊する清人を一樹が押さえている間に、脇をすり抜け部屋に入った。 まぁ入ったら入ったで奈緒にも同じ質問をされたが、一樹と同じ答えを返して煙草に火を点けた。 二人はまだ玄関先で話をしている、問い詰められているのだろうか?気にはなるが素知らぬ顔で彼女の話に相槌を打った。 暫くして二人が戻って来た、何やらニヤニヤと清人が厭らしい笑みを浮かべている。 「飯食いに行く予定だったけど予定変更!オレとナオで買い出し行ってくっから、シオリちゃんはカズキと留守番な!」 何故そうなる?訝しげな視線を向けると、清人はまぁまぁと宥めるようにアタシの肩を叩き、奈緒を連れていそいそと玄関へと向かった。 そして出際に、扉から顔だけを覗かせ一言。 「コイツ遅漏だから…ガンバれよ」 「いいから早く行けって」 一樹は清人の顔を押し出すと話し声が遠去かったのを見計らい鍵を閉め、何故かチェーンロックまで掛けた。 そして振り返りざまキスをすると、そのまま引き摺るようにアタシを部屋に連れ込みマットレスへ押し倒した。
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