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「何度かけても電話出ねーし、帰ってみたらシオリと抱き合って寝てるしよ…話してくれてもいいんじゃねーの?」
ということは一樹はまだ何も話していないという事だ、これから話をするにしてもアタシが居ては都合が悪いかも知れない。
「…じゃあ、アタシ帰るね」
「あー…ちょっと待ってて、眠気覚ましにシャワー浴びたら送ってくから」
弱ったな、追求の矛先がこちらに向く事は分かっているから清人と二人きりにはなりたくないのだが、一樹も一人で考える時間が欲しいのだろう。
とにかく、なるべく視線を合わせないよう携帯を弄りながら一樹が早く出てきてくれる事を願った。
「…で?本当のとこどうなってんだよ?」
早速きたか。
「一樹はなんて言ってんの?」
一瞥すると予想通りの答えが返ってきた、否定も肯定もせずはぐらかされていると。
「清人に報告しなきゃいけない義務はないし、知る必要もないからでしょ?」
「…まぁそうだけどよ。でもオマエらって名前で呼び合ってるよな?服着てたけど抱き合って寝てたし…もうヤッたんだろ?」
しつこい上に下世話な質問だ、溜め息が出る。
でも言われて改めて気付いた事がある、それは一樹がアタシを栞と呼んでいる事だ、いつからだ?
「タメ口でいいって言うし。清人もアタシのこと名前で呼んでんじゃん、オマエって呼ぶ時もあるしさ」
でしょ?と清人に向いたその時だった、突然床に押し倒された、何故そうなったのか瞬時には理解できなかった。
けれど大きく脈打つ心臓が危機的状況だと物語っていた、その恐怖心と動揺を悟られぬよう呆れたように溜め息を吐いてから、アタシは清人を真っ直ぐ睨み上げた。
「何の冗談?笑えないんだけど?退いて」
「冗談だと思う?オレが聞いたことに答えてくれたら退くよ」
「意味わかんない。そこまでして知りたいこと?知ってどうすんの?いいから退いてよ」
「だから!オマエが答えたら退くって言ってんだろ?オマエ、状況わかってる?カズキが居るから何もされねーとか思ってんだろ?」
鳩尾辺りがギュウッと息苦しくなった、一樹に助けを求めたいが大声が出る気がしない、せめて声だけは震えてくれるなとアタシは生唾を飲んだ。
「清人が退いたら答えるから…とりあえず退いて」
「わかってねーなぁ!今主導権握ってんのオレだから。オマエのその気強いとこ嫌いじゃねーけどさ…あんまイラつかせんなや、マジでヤるよ?」
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