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二人で組んで仕事をする日が来るとは、どちらも思っていなかったらしい。地元の地主連中の多くが悪かった頃の不動産屋と地味な子だった銀行マンのことを覚えていた。二人は嫌われるどころか喜んで仕事を任された。同級生やその親たちも二人に不動産の売買とそのための融資の相談に来た。二人で組んだ仕事のおかげで成績はうなぎのぼりだった。
不動産屋は、会社が都内に初めて開く支店の立ち上げメンバーとして抜擢された。知らない土地、新しい顔ぶれとの仕事に少し心が震えた。
支店と言っても、駅前の小さな事務所に従業員は支店長と副支店長、自分を含むヒラの営業が3名、金を預かるおばさんが一人とお茶汲みと窓口業務の若い女の子が1名、しかも自分の机があるのは支店長と経理のおばさんだけ、そんな職場だった。
今までは知り合いの伝手を頼ってばかりの仕事をしていた。それで先輩の社員達よりよっぽどいい成績を上げていた。だから、その他の方法、先輩達がやっているような当たり前の方法を知らなかった。
「おまえよくそんなんでやってこれたなあ」
呆れたのは支店長だった。
「よし、俺が教えてやるから黙ってついて来い」
支店長のレクチャーは物件の特徴を知る前にまず物件の売主となる顧客を徹底的に調べるところからだった。どんな役所に行ってどの窓口でどんな書類を手に入れるか、何を調べるか。売主が顔を出すであろう近所のどんな店に入ってどんな話を聞くか。子どもがいるなら子どものことも徹底的に調べる。学校での評判はどうか。成績はどうか。習い事は、交友関係は。
役所の書類が簡単に閲覧できることにも驚いたが、それ以上に子どものことを調べるだけで親の金回りまで見えてくることに不動産屋は驚いていた。俺の親も近所でこんな風に見られていたのかもしれない。今まで考えてみたこともなかった。
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