第1章

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更衣室で服を脱いだ時、微かに昌紀の香水の香りがした。 私の身体に、私じゃない何かが、私じゃない誰かがいる気がして、それが嫌だ。 なのに私はいつも、香水をつける男の人ばかりと抱き合う。 そしていつも、私は誰かの香りを身に纏っている。 香水が嫌なんじゃない。 そんな自分が嫌なだけ。 大学は楽しくない。 特にやりたいことも無くて、なんとなくで選んだ道。周りの子みたいに馬鹿みたいに青春を楽しむこともできない性格で、友達といてもいつもどこか冷めている。 バイトだって、やりたくない。 でもうちは母子家庭。しかももう何ヶ月も母は家に帰ってきてないから、自分で稼ぐしかない。 今の現状に不満があるわけじゃなくて、何かやりたいことがあるのかと聞かれても何も答えられない。 だけどもう少しだけ、あと少しだけ、この人生に楽しさを見つけられたら、なんて思ってしまっている。
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