第1章

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教室を覗き込むと、声の主は、クラスメイトの桜木順太だとわかった。 桜木は、そのような類いのセリフを何度も口にし、手元の手紙をしばらく見やっては、顔を真っ赤にしながら懸命に練習を続ける。 その様子を見れば、神田という相手へ好意を抱いていることは、一目瞭然だった。 まさかベランダで寝ている人間がいるなんて全く想像していなかったのだろう、「なぁ」、と声をかけると、桜木は「うぁっ」という声をあげ、俺の姿を視界に捕らえると目を丸くして硬直した。
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