第2章

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「じゃあ・・・俺帰るね。今日はありがとう、神田くん」 「いや、ありがとうはこっちのセリフ。いきなりだったのに、ありがとう」 「うん、こちらこそ」 桜木は嬉しそうにはにかむと、それじゃあ、と更衣室のドアに手をかける。 あ、行ってしまう。嫌だ。まだ、一緒にいたい。 「桜木クン、待って」 ―――衝動的に、その腕を掴み、自分の胸の中へと引き寄せる。 ―――桜木を抱きしめる腕にぎゅうと力を込める。 ―――桜木の首筋に、俺の息が吹きかかり、桜木はピクリと反応を示す。 ―――俺はそのまま桜木の頬に手を添え、顔を近づけ――――。 「どうしたの、神田くん」 桜木の声にはっとなる。 衝動的に呼び止めたはいいものの、桜木を抱きしめてキスまでする妄想を繰り広げた所で、俺の思考は止まってしまった。
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