第2章

24/50
前へ
/76ページ
次へ
真が、俺の顔をチラリと見やる。 いつもあまり踏み込んでこない真が、俺に探りを入れているような、そんな雰囲気が漂う。 ひょっとして、今日話したキスの相手が桜木だと気づいたのだろうか。 「あれ?真ってそっち系だったっけ?」 咄嗟に、真をからかうふりして、桜木の名前が出ただけで高まった自分の胸の鼓動をごまかす。 「ばーか」 真に脇腹を小突かれる。 「でも、真面目な話、桜木って女顔だよな。たまに、勘違いしそうになる」 その言葉を聞き、何となく、もやっとした何かが胸をよぎる。 実は、つい先ほど、真が桜木のことを可愛いと口にしたときにも、似たような感覚が走った。 「…ああ、ヤローだらけの中だし、余計際立つんだろ」 だな、と真は呟き、そこから話が広がるでもなく、いつのまにか話題は別のものに変わっていた。 真の話に相槌を打ちつつも、俺が頭の中で考えていたことは、真との会話で自分の胸の中に生じたもやもやの正体だった。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加