第2章

35/50
前へ
/76ページ
次へ
そんな状態になっても、やはり二人の内どちらかにおはようと言ってもらえることを期待し、毎朝「おはよう」と言いながら居間へ顔を出すが、ただ誰もいないシーンとした空間に自分の声が虚しく響くだけだった。 その度に、自分は一人なのだ、嘘でも期待した温かさを得ることはできないのだと思い知らされ、そのうちにおはようと口にすることをきっぱりと止めた。 温かな朝の陽気に当てられてさえ、自分の憂鬱を打ち消すことはできないのだと思うと、益々、孤独感に苛まれた。 こうした子供時代があってのせいか、いまだに朝は苦手だ。 温かいはずの日の光を浴びても、どこか憂鬱で、爽快な一日の始まりのはずなのに、いつも後味の悪い夢を見たような気分になる。 桜木のおかげでそうした気分が吹き飛び、爽やかな朝を迎えられるのは、本当にありがたかった。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加