第2章

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教室の戸を開くと、窓際に立つ桜木の姿が目に入った。 そのまま軽く手を振り、「おはよう」と声を掛ける。 「おはよう、神田君。これ…」といいながら手に持っていた袋を渡してくる。 俺に貸すために朝からずっと手にしていたのだろう、桜木の温もりが袋に残っている。 「ありがとう。なるべく早く返すよ」 「いや、ゆっくりで大丈夫だよ。俺何回も観たから」 「じゃあ、ゆーっくり観させてもらう」 正直に言うと、長く借りていればそれだけ桜木と接する口実ができるから、あわよくば一月ほど借りる気でいた。 頬を緩ませながら自分の席に戻ると、視線を感じ、辺りを見回すと、真と目が合った。 目配せで挨拶を交わしたつもりだったが、真はふいと視線を逸らす。 「……?」 何となく、真のその様子に違和感を感じ、声を掛ける。
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