83人が本棚に入れています
本棚に追加
桜木から詳しい事情も聞いてないのに、難しい人だったというその言葉だけなのに、そいつが一瞬でも桜木の心の中にいたのだと思うと、心臓を握られたように、痛みが走る。
そいつにどんな顔して笑ってみせたの?
どんな風に語りかけたの?
俺の知らない桜木を、そいつはいっぱい知ってるんだ。
見えない相手にこんな風に気持ちを揺さぶられるなんて、馬鹿らしいし、情けない。
今まで誰かに対して嫉妬なんて、したことがなかった。
俺はどうかしてしまったんだろうか、と不安になる。
こんな鬱陶しいもの、俺にはいらない。訳のわからない感情に振り回されるのはごめんだ。
自分の中に生まれた負の感情に無理やり蓋をし、その日は早めに布団に就いた。
最初のコメントを投稿しよう!