第2章

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桜木から詳しい事情も聞いてないのに、難しい人だったというその言葉だけなのに、そいつが一瞬でも桜木の心の中にいたのだと思うと、心臓を握られたように、痛みが走る。 そいつにどんな顔して笑ってみせたの? どんな風に語りかけたの? 俺の知らない桜木を、そいつはいっぱい知ってるんだ。 見えない相手にこんな風に気持ちを揺さぶられるなんて、馬鹿らしいし、情けない。 今まで誰かに対して嫉妬なんて、したことがなかった。 俺はどうかしてしまったんだろうか、と不安になる。 こんな鬱陶しいもの、俺にはいらない。訳のわからない感情に振り回されるのはごめんだ。 自分の中に生まれた負の感情に無理やり蓋をし、その日は早めに布団に就いた。
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