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「────ゴメン、俺一人でしゃべってばっかだ」
ボート競技で県大会に出場する事をやたらと褒められて、面と向かってだけに真央は照れ臭くて下を向くしかなかった。
「そんなことないです。恥ずかしいです・・」
「恥ずかしい? どうして・・」
「だってシングルですよ。力が有り余っているのを証明しているようで・・・家族も県大会出場決まった時一応褒めてくれたけどお母さんは微妙な表情で・・・早くボート辞めてほしい目が言ってるんですよ」
家族の誰もが未経験のスポーツを真央が始めた事で、上と下の兄と妹は面白がっているが、両親は未だに困惑している様子が感じられるのだ。
「女の子なのに日焼けして真っ黒で腕が太くなって、袖なしの可愛い服が着せられないってよくお母さんが・・・」
その代わりにブラスバンドをしている妹が母の着せ替え人形ごっこに付き合ってくれているが、、妹の場合は自分好みの服をちゃっかり強請っているみたいで上手くやっているようだ。
「ああそれは・・・女の子にとってはお洒落からは縁遠くなるスポーツだな。ウチの部のマネージャーも俺らの練習に付き合ってるから真央ちゃんと似た感じだよ。でも健康そうに見えていいんじゃない?」
「そうですか?」
「うん・・・実は俺、大分前なんだけど連れと一緒に短大の女の子とグループ交際した事あるんだけど、全員ボートの事知らない子ばかりで───」
「ふうん・・・」
グループ交際という言葉に引っかかった真央だが、大学生ともなればそれも日常なのかと無理に納得しようとした。
「初めってさ、珍しいから練習に見に来てくれたりしてたんだけど・・・・ほら俺らの部ってユニフォームがあれだろ?」
言われてみて真央は首をかしげた。上村ではないが同じ大学のボート部員の練習姿を記憶から掘り起こした。
「ひょっとして・・・あのレスリングみたいな?」
上村の大学のボート部のユニフォームは伝統なのかレスリング選手が着る様なグレコタイプだった。
「文系女子には受け入れてもらい難い格好だったわけ」
「あー・・・・」
これは真央にもコメントしにくい内容だった。
「でも、練習の時って皆さんTシャツを上から着ていたと・・・」
「着てるよ────でもその時は濡れたかなんかで脱いでたんだよなぁ」
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