びしょ濡れの女

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 夜10時過ぎ。  残業続きで、最近帰るのがこの時間辺りになってしまっている。当然、電車に乗って自宅の最寄り駅に着くのは夜11時頃。早くこの企画を成功させなければと思いながら、帰路についた。  駅に着き改札を出ると、突然どしゃ降りになった。自宅は歩いて10分と近いのにタクシーは使いたくないので、止むまで待つことに。、外をボーッと眺めていると、道路を挟んだ歩道に傘もささず、びしょ濡れの白い服を着た女性が立っているのが目に入った。何故傘もささずにあんな所で立ち往生しているのだろう。  すると、そのびしょ濡れの女性が僕に気がついたのか、こちらを見て不気味な笑みを浮かべたように見えた。ゾッとしたのと同時に気味が悪くなり、慌てて目を逸らした。 僕を見ていた何故?意味のわからない不安がよぎったが、心を落ち着かせ、再び先ほどの女性がいた所に目をやると、女性はいなくなっていた。  こっちを見て笑ったのは、僕の見間違いなのかもしれない。そうだ見間違いだ。そう思うことにした。 しかし、雨は一向に止まず、仕方なくタクシーで帰ることにした。 次の日の仕事帰り。また、駅に着くなりどしゃ降りになる。 今日もかよ!しかし、タクシーは高くかかる。昨日は痛い出費になってしまったので、今日はギリギリまで粘ることにした。  ザーザーと豪快に降りしきる雨。ふっと、昨日の女性のことを思い出し、昨日と同じ女性のいた場所を何気なく見る。  !ッッ!!  そこには昨日と同じ服装をしたびしょ濡れの女性が立っていた。またいる。同じ場所に。 気味が悪く目を逸らそうとすると、びしょ濡れの白い女性がまた、不気味な笑みをした。 するといきなり、こちらに全速力で駆け出してきた。 「わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!!」 怖くて僕は叫びだし、逃げ出そうとすると、  ドォ――ン!キキィィィ!!  何かが車に轢かれたような轟音が響いてきた。 見ると、さっきのびしょ濡れの女性が倒れていた。白かった服は血で赤く染まり、雨と混ざり、辺りは血の池のように赤く染まっていた。警察や野次馬が集まり大騒ぎになる。 僕は見てしまった。血まみれの身体で顔だけをこちらに向け、血で赤く染まった顔で不気味な笑みを見せ、赤く染まった歯でケタケタと笑っているのだ。そして、その女はカッ!と見開いた目で僕を見た後、二度と動くことはなかった。
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