びしょ濡れの女

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 しばらくは、企画したプロジェクトを成功させるため、一心不乱に仕事に没頭した。仕事の成功もあったが、あの日のあの女性の気持ち悪い姿が頭から離れず、それを忘れようとする意味もあったからだ。  それから、プロジェクトは無事成功し、成功を祝うため、数名の社員で2泊3日の旅として秩父の温泉旅館に行くことになった。  とても綺麗な大自然あふれる景色とそこに佇む旅館がとても気持ちがよく、仲間と日中から酒を飲みながら騒いでり、温泉や旅館の名物料理を楽しんだり、近くの川で釣りを楽しんだりしていた。  今日も川釣りを楽しむ為、仲間と向かうことになったが、向かう途中忘れ物をしてしまい、僕は一旦仲間と別れ旅館に戻ることにした。部屋で忘れ物を取り、旅館出ると突然さっきまでいい天気だった空が急に曇になっており、どしゃ降りになってしまった。  僕は仲間たちが、傘もなく困っているのではと思い、旅館のおかみさんに頼み折りたたみ傘を数本借りると仲間の待つ川へ向かうため旅館を出た。  その時、入口付近の雑木林の方に人が立っているのがチラッと見えた。どしゃ降りの中白と赤の交じる服を着た女性が佇んでいるようだった。気のせいかと思い先を急ごうとしたその瞬間、僕はあの駅前のどしゃ降りの女性が脳裏に浮かび恐怖を感じ、再び女性のいた方向を見た。・・・・が、誰もいなかった。  どしゃ降りに女性というだけで、恐怖してしまい、見えない者を脳内で勝手に再生し、さも見えているように錯覚したに違いない。そう僕は自分に言い聞かせ、仲間のもとに向かった。
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