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 山に差し掛かる三叉路に置かれていた看板が、二年程前の台風の時に壊れた。だけど誰かが応急処置をしたらしく、地元の人間の誰一人として、暫くの間、看板が壊れていたことに気がつかなかった。  みんなが看板がおかしいと気づいたのは、この付近で行方不明者が続出したからだ。  三叉路の突き当たりに立てられている看板。  右の矢印は山沿いを走る道を差している。  左の矢印は山から離れて別ルートに抜ける迂廻路の案内だ。  本来、この二方向への矢印がこの看板の総てだった。  なのに発見された看板には、もう一つ、直進を示す矢印がつけられていた。  看板の裏手は深い森で、人が通れる程度の小道の一本すら存在していない。そもそも道沿いにはガードレールがあって、森に入り込む部分がない。だから直進の案内矢印をつけたところで、そっちに進むのは不可能だ。  でも、まるで案内に従って直進ルートを選んだかのように、何人もの行方不明者が続出したのは事実だ。  今はもう、元通りに直されて、看板の矢印は左右を示すものだけになったけれど、これに直進案内の矢印がついていた時、それを見た人はどう思ったのだろう。もしかしたら、無い筈の道が見えて他人達もいたんだろうか。その人達は案内に従って、存在しない道に進んでしまい、いなくなってしまったんだろうか。  真相を聞いてみたいが、行方不明者達は誰一人戻っていないらしく、いまだにこの件は謎のままだ。 案内表示…完
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