死は安心の一歩手前に

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水を独占する『人間』という動物への復讐と言われている。 遥か大昔にヨーロッパで起こった事件。 その事件により、貴族49人と農民94人が命を落とした。 貴族で3人、農民で1人、日記を残した者がいた。 当時の王は、この得体の知れない事件について記された日記の内容をまとめ、一冊の本に仕立た。それを家来に押し付け、民衆全員に配るよう命じた。 農民も貴族も、本を受け取った。教会や一般人の間で『災難から逃れられる』インチキのお守りを売る動きもあったが、長くは続かなかった。 後から、物語だと皆が主張した。下手なファンタジー小説だと。 本の表紙には人魚が使われたが、題名は無い。 この事件は関わった人が此の世に居ないため、永遠の謎と化した。 ー ……Don't bury fish in earth on the day when thunder was here. If the color of her eye change to black, you're killed. 「あー、英語勉強しとけば良かった」 仕方がない。英語の苦手な自分には、とても読めない。 フィッシュは魚、カラーは色、ブラックは黒……と言った具合である。娘が中学生になって英語教えてって言ってきたら成すすべがない。 題名もない本だったので気になり、手にとって開いてみたものの、全くわからない。 結構損失が酷い本だ。しかも、何だかベタベタしている。 古い本によくある、誰かが汚れた手で触った後のベタベタだ。古い汚れ。嫌いだ。 星座占いで最下位だった。昨日今日と立て続けに嫌なことが続いている。 もう勘弁してほしい。 昨日はずぶ濡れの雨の中、5歳の娘、理乃は子猫を連れて帰ってきた。 傘もささないで。 アパートはペット禁止だ。うちはこっそり理乃がお祭りでとった金魚を飼っていたが、シングルファザーで自分しか世話をしていない。 流石に猫はまずいだろと思いながらも、小さな娘が大事そうに持ってねだっている姿をみると、愛らしくてならなかった。 仕方がなく飼うことにしたが、雷が落ちて停電。コンセントに繋いでいた携帯は故障。飼い方をネットで調べられなくなるという非常事態。
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