死は安心の一歩手前に

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抜こうと腕を引き上げた。必死だった。更に降り続ける人形も全部が獲物一点をロックオンして向かってくる。 「助けてくれ……助けてくれ、神様ああーーーッ!!!!」 初めて神様に命乞いした。 こんなの、悪夢だ。そう信じたいが、この千切れそうな腕の感覚は間違いなく現実である。 突然光が差し込んだ。太陽の光だ。 あんなに雨が降っていたのに、急に。 ……雨ではなくて、降っていたのは人形だったか。 人形も左手と左足を追い出した。階段に投げ捨てられる感覚。 黒く赤い目をした人形は、回れ右をした。ぞろぞろ整列して何処かへ帰っていく。 もうこっちには見向きもしなかった。 た……助かった。
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