死は安心の一歩手前に

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「ただいま」 ミャーオ! 何処かから猫の鳴き声が聞こえた。一緒に遊んでいるのか? まさか……水を使ってないだろうな。 しかし聞こえて来るのは猫の声だけ。 まさか……。 「理乃?!」 理乃は無事か? あの変なおばけに食べられたりしなかっただろうか。 よく考えてみれば、家の鍵が開いていた。 ぞっとする。 「理乃!」 部屋、リビング、キッチン。近付きたくもなかったが、今はそれどころではない。 「どこにいるんだ! ……返事を……してくれ」 お風呂場が最後だった。 微塵の迷いもなく開く。 頼む、居てくれ……! そこには、可愛らしい理乃の姿があった。 「理乃……!!」 ようやく、安心した。 アップルジュース……と思ったが、カバンごと投げ捨てて来てしまった。 その後は、理乃に猫の飼い方について絵本を読んでやる。 ……幸せな時間は来なかった。 振り返った理乃のは、白の無い墨一色の眼。 耳まで裂けた黒い口で笑って……
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