変わらぬ風景

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「学生さん1人旅かね?」 「あ、ハイ」 大学に入り最初の夏休みに1人旅を思い立ち、乗車した蒸気機関車の客車の中で、向かい側に座る老人が声をかけてきた。 「目的地はどこだい?」 「シュガードーナツ湖を見てみたいと思いまして」 「ああ、あそこは良い所だ、湖の傍に立ち入る事が出来ないのが残念だが」 「そうなのですよね」 「だがそのお陰であの湖の周りは開発されず、昔ながらの風景を留めている事が出来るのだから、仕方が無いか」 「それはそうなのですが……」 機関車が目的地より幾つか手前の駅に停車する。 「あ、ここだ、じゃ学生さん良い御旅行を」 「ありがとうございます」 話しかけて来た老人は荷物を抱え降りて行った。
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