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真夏の蒸し暑い夜、田園にかこまれた国道に続く一本道の途中で蝉や蛙の鳴き声を聞きながら、彼は、ぼんやりとたっていた。 太陽は沈んだというのに眩暈がするほど暑いのだが、真夜中には殆ど人通りもないこの道を、彼はひたすら照らし続けなければならない。 照らし続けなければならないにも拘わらず、カチカチと音をたてて力尽きようとしている電球に、なんとも言い難い虚しさを感じていた。 点滅する電球の周りを小さな虫たちが飛び回っている。 煩わしい。 彼は、虚しさと同時に込みあげる苛立ちを、黙ってただじっと堪えることしかできない。 電球よ、いっそ力尽きてくれ。 灯が消えれば虫たちも、この苛立ちもいずれ消え去ることだろう。それとも、いっそ自分が消えてしまえたら。 翌日、国道に続く一本道の途中にたっていた街灯がひとつ、根こそぎ消えていた。 街灯があったであろう場所にはぽっかりと穴があいており、その横には電球が転がっていた。 しかし、そこを通る者以外は誰も気づかない。街灯がひとつ無くなったことなど、誰も気づかないのだ。 2010夏
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